今週のお題「人生変わった瞬間」
「人生変わった瞬間」が思い返す限り私にはない。そこまで劇的な何かはなく、よく言えば今までの人生一段一段コツコツと階段を上ってきたような気持ち。
悪く言えば、というか事実を述べると川に浮かぶいかだのようにただただ流されてきただけな気がする。まぁそれも悪くないかもしれないけど。
ただ、ひとつ革新的に自分の中で何かが変わった瞬間というと、今でも鮮明に覚えているものがある。
それが、「音楽を好きになるきっかけとなった曲」だ。よく有名なアーティストが
「あなたのルーツはなんですか?」と質問されるアレのことである。
実はずっと自分でそれに答えてみたかったのだが、何年生きていてもいっこうに誰も質問してきてくれない。なぜだ、なぜなんだ。
そうか、私は素人だった。
ということですべてが自由な自分のブログにてその夢を叶えたいと思う。
Q. あなたのルーツはなんですか?
謙虚な天狗:う~ん、難しい質問(笑) いっぱいあるんですけど、そうですね、やっぱり一番はSTAY TUNE です、suchmosの。
Q. Suchmosですか!?現在は演歌歌手として活躍する謙虚な天狗さんですけど、それは意外でした。
謙虚な天狗:そうなんですよ、これ言うといつもびっくりされるんだよね(笑) 多分中学1年の時くらいだと思うんだけど・・・
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この手の誘導って無料部分が意外と長かったりするから逆にヤダよね。今回は短すぎるけど。これくらいの方が逆に良心的かもしれない。
私は中学1年くらいのとき、Suchmosの「STAY TUNE」を聴いたことがきっかけで音楽を聴くのが好きになった。
Suchmos - STAY TUNE
いきなりサチモスサチモスと言ってしまったが、世間的に知名度はそれほど高くないかもしれない。STAY TUNEがバズったのが2016年あたりで、彼らがロシアW杯のテーマソングに抜擢されたのがちょうど四年前。
その年は紅白にも出てるのでそれなりに知られてるのかな。
別に胸を打つ展開があるだとか、情熱に訴えかけてくる歌詞があるとかではない。
辛かったあのどん底の時期に一筋の光となって私を救ってくれるみたいなタイプでもないし。
しかし、この曲は私にとって衝撃的だった。
人生においてかなり重大な曲がSTAY TUNEですと言うと、これは予想だが「そこまで?」というような感想を抱く人ももしかしたらいるかもしれない。
確かにSTAY TUNE に私が見出している意義は世間とズレているかもしれないが、私にとっては確実に大事な曲であることに間違いない。
というのも、それは楽曲に出会ったタイミングに深く関係している。
私はSuchmosに出会うまで、音楽というといわゆる歌謡曲というか、要するにテレビで流れてくるものくらいしか知らなかったし、そもそも音楽に興味がなかった。
まぁそもそも小学生なんて遊ぶことしか考えてないし、自然と言えば自然。
多分ロックに一番近づいたのは、当時流行っていたKANA-BOONとかを聴いたときで、姉が聴いていたのを横で聞き流していた程度だった。
中学にあがってからも特に音楽と縁はなかったが、ある日姉が「これ、見てみ。おしゃれ」とYouTubeの動画を薦めてきた。
何とはなしに薦められるがまま動画を見ると、アディダスのジャージを軽やかに羽織った色白の男がドヤ顔で歩いている。
STAY TUNEは冒頭、サビから始まる。
サビのメロディーを聴いた瞬間、まさに脳内に電流が走ったような驚愕、圧倒的僥倖!!
ざわ・・・ざわ・・・
鳥肌が立つ。どこでもドアを開いた時のような感覚。
音楽におしゃれという概念があるとは知らなかった。
その後、すぐにSuchmosについて調べまくった。他のMVを漁ったり、ググッたり。
ここでググるという選択肢がある時代に生まれたことは単純に幸せと捉えていいのかな。
動画の概要欄に、バンドの紹介文句として「和製ジャミロクワイ」と書いてあったりして、それについてまた調べてみる。
Suchmosを起点にして葉脈のように新しい世界が広がっていった。
カッコつけて言えば、俺のルーツはサチモスとでも言っちゃいたい。
いま思えば音楽に興味が出てきそうな年齢と、サチモスの人気が出てきた時期がちょうどかぶっていたのが良かった。
その後も私が音楽に興味を持ちだしたタイミングでシティポップのリバイバルの波が押し寄せてきたり、ヒップホップで言えばフリースタイルダンジョンが始まったりと、ハマっていく要素が目白押しであったのでのめりこめた。
そういえば、さっきサチモスは「どん底で落ち込んでいるときに励ましてくれる系名曲」を作るタイプの集団ではない、みたいなことを書いたと思うが、個人的にひとつだけサチモスに物理的に救われた経験があることを思い出した。
あれは高校2年の8月、部活の合宿で山中湖に5泊したときの話だ。
ただでさえ心身ともに疲弊しているわけだが、3日目とかの一番きついときに山中湖13.3キロを一周するという可哀そうな企画があった。
しかし走るしかないわけで、スタートはする。ただやっぱり6割くらい、いや65%くらいのところで必ずランナーズハイならぬランナーズロウに陥る。私も順位的にはそこそこの位置についていたこともあり、もう緩めようかななんて考えはじめ、気分が下がっていた。
そんなときだった、汗が滴る耳にヨンスの歌声と歪んだギターが流れ込んできたのは。
Suchmos 「VOLT-AGE」
実際はこんなライブ会場の轟音なんかとはかけ離れたちっぽけな音量で、海の家ならぬ湖の家みたいな、何を売っているのかわからない古びた小屋のスピーカーから流れてきたものだった。
が、そのとき確実にこの音楽が心に再び灯をともし、奮い立たせてくれたのであった。その後、ペースを何とか維持して順位も挙げることができた。
ありがとうよ、幸モス。
W杯のテーマ曲としても、静かに燃えるまさに侍といった熱を感じられてぴったりだったと思う。
さて。好きな曲を聴かれてSTAY TUNEと答えてしまうとミーハーに括られてしまうという懸念がある。あるある。
サチモスの楽曲をいくつか聞いていると死ぬほどわかるが、サチモスという生き物はミーハーが大の苦手だ。気を付けなければならない。
広くて浅いやつ もうGood night
と言われて終わりである。
あとから思い返すと私にサチモスを薦めてきた当時の姉は明らかなミーハーで、ネットでバズっていたから刹那的にサチモスを楽しんだだけで、おそらく彼女はSTAY TUNE以外の楽曲をほとんど知らない。
だが、ミーハーがいて結果的には良かった。めでたし。
ラクダの背の上で崩壊する都市
STAY TUNEのイントロ部分では、何かを言っているが微妙に聞き取れない歌詞が存在する。いや、していた。
今現在は研究者によってすでに解読されていて、おそらくはゴリラズのFeel Good Inc. の冒頭の歌詞、
City's breaking down on a camel's back
の部分をヨンスが歌って
City's break / down on /City's breaking down on a camel's back
と区切っているものであろうという説が濃厚だ。
ところでこの歌詞は、
the last straw breaks the camel's back(背中に乗せた一本の藁でラクダのコブが崩れる)
ということわざをもじったものらしく、都市はラクダの背の上で崩れていくという意味。
Feel Good Inc.の全体的なメッセージなども加味するとこの言葉は、要するに「物事の表面ばかりに目をとられて自分をもたずに生きていると、ふとしたときに自分自身の薄っぺらさで身を滅ぼしてしまう」ということだと思う。
そのメッセージをサチモスがサンプリングしたのにもはっきりと意図が見える。
STAY TUNEという曲はMVの雰囲気からして「クールにいこうぜぇ~、夜の首都高ブーン」的な歌詞なのかと勘違いされがちだ。
しかし実際は「薄っぺらいやつばっかでうんざりだ」というメッセージが主体であり、皮肉の効いた社会への問いかけだ。
City's breaking down on a camel's backという言葉はそのまま日本社会の体たらくにも使えるし、アラブの金満国家にもうわべだけの環境保護活動にも使える。
和製ジャミロクワイと形容されるだけあって、クールな装いで行き過ぎたテクノロジーを批判したVirtual insanityにも通ずるものがある。
余談だが、というかこのブログ自体すべて余談みたいなものなのだが、「和製○○」という文言って確かに言いたくなっちゃうし便利なんだけど確実に賛否両論巻き起こるよねって話。
サチモスは歌詞が批判されがち(英語の文法しかり)なのだが、社会を切り取る風刺的な視点や、自然体で且つスタイリッシュに生きる姿勢を歌った歌詞にはオリジナリティーを大いに感じる。
思ったより記事が長くなってしまいそう。
サチモスは去年のはじめあたりに活動を休止したが、ソロとしては度々イベントなどに露出もあった。
今回はその中で、ギターを担当していたTAIKINGの楽曲をひとつ紹介したい。
TAIKINGは間違いなく令和のロックシーンを支える代表的なギタリストで、ここ数年は藤井風やRADWIMPSのサポートとしても活躍されていた。
STAY TUNE のレコーディングを2万3千円のギターで録ったらしいから、そのパフォーマンスを疑うものはいないだろう。
サチモスとはまた違った趣が楽しめる。
TAIKING - 「Space Traveler」
Bメロで静かになるのが洒落ていて、サビの転調を引き立たせていると思う。
ギターあれだけ上手いのに歌もさらっと歌いあげて、惚れますね。
歌声がやさしい。オカモトズのオカモト・コウキ氏もすごいやさしい歌声なんですよね。
ギタリストってやさしいのか。
MVのコラージュも良い。
コラージュ、コラージュ・・・ミラージュ・・・Mirage・・・
Mirage Collective - 「Mirage」
Mirage Collective というのは月10ドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」の主題歌を担当している、STUTSプロデュースの音楽集団。
去年話題になった大豆田とわ子の主題歌「Presence」的なノリってことですね。
📸 #MirageCollective@STUTS_atik @suchmoz @butaji_tw @nagaokaryosuke @hama_okamoto @hikaru_pxr @yusei_T84
— Mirage Collective (@Mirage_Colle) November 25, 2022
Photo by Seiji Shibuya
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Mirage Collective
Mirage Op.3 - Collective ver.
好評配信中
📺https://t.co/swgXXHNAfX
🎧https://t.co/sV9dK4I3PA pic.twitter.com/GnAlcNMN3k
Mirage collective のプロジェクト知らない人がこの写真見たら多分「サチモス見ないうちになんだか温かみ増したね。」と思うだろう。おそらくSTUTSに起因するものだ。
ドラマ自体はもう6話くらいまで進んでるっぽい。
確か私が最後に観た記憶のあるドラマはリーガル・ハイなので、もう幾年が経っただろうか。おもしろかったなぁ。
まさにオールスターという豪華なメンバーが集結。
ギターに長岡亮介(ペトロールズ)、ベースにハマ・オカモト(OKAMOTO'S)、ドラムに荒田洸(WONK)、ヴォーカルにYONCE(Suchmos)、トラックメイクとMPCはSTUTS(University of Tokyo)などなど。
ちなみにSTUTSの修士論文は『マルチモーダル・ユーザー・インターフェース構築のためのツールキット』らしい。どんだけすごいんだこの人。
ハマ・オカモトって星野源はじめとしていろんなところに気づいたらいますね。音楽バラエティー番組のMCとかもやってるし、日本の音楽界で活躍、いや、どちらかといえば暗躍してる感。
単純にハマ・オカモトってあの若さでなんというかあの人間的な落ち着き、余裕のある雰囲気を纏ってるの憧れる。やっぱハマ・チャンのご子息だけあるわ。
正直、ヨンスが「バンドのフロントマン」として歌っているのを再び観ることは無いかもしれないと薄々思い始めていた。
今回は言ってしまえば期間限定バンドではあるけれども。
ソロとしては他のアーティストの楽曲に参加したり、直近ではW杯に合わせたadidasの特別CMに登場し、中村俊輔らと共に完璧な棒読みを披露していた。多分W杯期間中はずっとやってると思うので、注目です。
Suchmosが休止を発表したときは、「休止」だし、メンバーのコメントにも「修行の時期に入ったため」みたいな文言があったから、いつかまたSuchmosは復活するだろうと何となく思っていた。
しかし、去年の10月に、ベースのHSUさんが亡くなった。その瞬間、Suchmosが同じメンバーで復活することはできなくなってしまったし、それからはもう再結成は無いかもしれないと考えるようになった。
今回のMirageプロジェクトを見て改めて思ったが、ヨンスはやっぱりマイクの前に立つ佇まいが飄々としていて絵になる。かっこいい。
なんか、文言がジャニーズの推し活ブログみたくなってきたので終わろう。
あ、実は今更ながら芥川賞を獲った宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を読んだので書評というか感想を書きたいが、書きたいことがイマイチ思い浮かばなかったら断念しよう。