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【児童文学】『黒ねこサンゴロウ』はじめて味わった旅への憧憬と哀愁

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あたたかい静寂に包まれたとある小学校の図書室。その出入り口から一番遠い、すみっこの本棚に僕はこの本を見つけた。

 

だいぶ色褪せているようだ。背表紙は茶色と白の中間みたいな色をしているが、おそらく元々はこんな色じゃなかったということはわかる。

 

5冊並べて置いてあるので、誰も借りてないとすれば5話完結のシリーズものだろうか。個人的にはちょうど良い長さだ。

 

第一巻『旅のはじまり』を手に取ってみる。

表紙には、人間のように直立する物憂げな黒ねこが一人、いや”一匹”だろうか、味わい深いタッチで描かれていた。

あまり親しんだことのない類のイラストだったのもあり、興味を惹かれた。

 

僕はそのままカウンターまで本を持っていき、六年生くらいと思われる図書委員のお姉さんに

「これ、かります。〇年〇組〇番の○○です。」

と定型文をボソッと呟いてバーコードを読み込んでもらった。

 

 

家に帰ってからリビングのソファにもたれかかり、丁寧に使い込んでいるダークグリーンのランドセルから『黒ねこサンゴロウ』を取り出す。

 


www.youtube.com

 

 

「しつれい、ここ、あいてるかい」

頭の上で、すこししゃがれた声がした。

「はい、あいてます」

返事をしながら、ぼくは、ふりむいた。そして、おどろいた。だって、座席のよこにたっていたのは、ねこだったんだから。

『旅のはじまり』より

 

あっという間に黒ねこサンゴロウの世界に惹きこまれていた。

 

長期出張に出かけている父に会いに行くために一人旅をはじめたケンという少年が特急列車に乗っていると、フルヤ・サンゴロウと名乗る黒ねこに出会う。

 

ケンがサンゴロウの旅の目的について聞くと、彼は声を低くしてこう言った。

「宝探しだ」

サンゴロウの手にあったのは宝の場所が書いてある古い地図。最初はいぶかしげだったケンも少しずつ興味を惹かれていく。それを見たサンゴロウはひとこと。

「いっしょに、くるかい。つれてってやってもいいぜ」

 

こんなセリフを言われて行かないわけにはいかない。

 

ふたりが大冒険の末に見つけた宝。その宝をもとに、サンゴロウはずっと憧れていた広い海へと旅をはじめることになる……。

 

 

『黒ねこサンゴロウシリーズ』竹下文子:作 鈴木まもる:絵

引用元:クールでかっこいい! 読者の心をつかんで離さない「黒ねこサンゴロウ」シリーズ | Kaisei web | 偕成社のウェブマガジン

 

1冊で様々な感情が味わえる

冒頭でも書いた通り、私がこの黒ねこサンゴロウシリーズを読み始めたときは5話完結だと思っていました。

ただ、いつ気づいたかは覚えていないのですが実は10話完結というなかなかの長編だったのです。

小学校の図書室には5巻までしか置いてなくて、結局地元の市立図書館で残り5冊を借りた、というのを覚えています。10巻というと少し長いように感じるかもしれませんが、退屈することなくスラスラと読めた印象があります。

 

私は読めなかったのですが「ドルフィン・エクスプレスシリーズ」という黒ねこサンゴロウシリーズの姉妹編も5巻あるらしいです。

 

黒ねこサンゴロウシリーズの軸となるテーマは、”旅”です。

サンゴロウは、失ってしまった記憶を思い出すために船に乗って大海原に乗り出します。

 

その先々で激しい戦乱に巻き込まれたかと思えば、孤島で慎ましやかに過ごす人々の生活に寄り添ってみたり、と壮大かつ繊細な旅路を進んでいくことになります。

この過程で、小さな子供にとってはなかなか馴染みがないだろう旅への憧憬や、ぼんやりとした物寂しさみたいな感情を感じることができるのが本書の魅力のひとつです。

 

小学生でも確かに”冒険”とか”探検”への憧れというものは強いかもしれませんが、黒ねこサンゴロウのもつ雰囲気はそれとはちょっと違います。冒険とか探検ってどちらかと言えばワクワクドキドキが主体で、おそらく哀愁とか退廃的な雰囲気については描かれることが少ないじゃないですか。

 

じゃあ黒ねこサンゴロウは何かというと、”旅”です。沢木耕太郎深夜特急のグルーヴ。放浪系ジャーニーなのです。

 

黒ねこサンゴロウは「小学生向け深夜特急」とでも言えましょうか。生き方の指針になってくれるかもしれません。

 

小学3~4年くらいからが推奨とのことです。

子供たちににぜひおすすめしてみてください!

 

 

 

以上、ちょっぴり気が早いかもですが読書の秋ということで思い出の一冊を紹介しました。

 

Thank you for reading!!

 

 

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